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Paul Simon 『Concert In The Park』
磯貝サイモン (アーティスト)
父親にこの名前を名づけられた僕にとって、Paul Simonの音楽はすべてが僕の血であり肉であり、そして例えるならば、童謡と同じような存在。数あるアルバムの中からひとつを選ぶのは非常に困難ですが、あえて選ぶならこの1枚でしょうか。
再生するたびに、子供の頃の記憶が鮮明によみがえってきます。我が家の休日と言えば、たいてい朝から晩まで、レコードやライブビデオが爆音で流れるのがお決まりでした。その中でも僕が一番よく見ていたのが、この1991年のPaul Simonソロのセントラルパーク公演です。
Paul Simonが爪弾く「Hearts and bones」のフレーズ。Richard Teeが「Bridge over troubled water(明日に架ける橋)」のイントロで叩くように弾くピアノ。Steve Gaddが「Diamonds on the soles of her shoes」の最後で見せる、お得意の3連タム回し。Michael Breckerの「Still crazy after all these years」の泣きのサックスソロ。そして終盤でPaulがひとりで弾き語るS&G時代の名曲「America」。
そのすべてに個人的な思い出がたくさん詰まっていて、まだ若かった頃の父親や、母親。あの頃住んでたアパートとか、ベランダからの景色。赤のブルーバードで、家族で出かけた場所。それから、父親に初めて反抗した夜や、母親を初めて泣かせた夜。このアルバムを聴くと、今でもそういう甘酸っぱい記憶が脳裏で雨のように流れてくるんです。
そんなことを思いながら、去年2009年に「最後の来日」と報道されたSimon & Garfunkelの来日公演に日本武道館に行ってきました。父親にチケットをプレゼントして。あの夜、完全にふたりとも10数年前のあの頃の気持ちに戻っていました。我を忘れて叫んでいたと思う。親子の青春そのものでした。終わった後に神楽坂でふたりで終電まで飲んだ酒の味は、言葉では言い表せません。
当然ながら子供の頃はまだその素晴らしさは、子供なりの感情と知識でしか理解していなかったと思います。単純にその音楽性の高さばかりに目を奪われていました。あれから僕は大人になって、いろいろな音楽に出会いました。時にはハードロック少年になったり、ゴスペルバンドでベースを弾いたり、友達とフォークデュオをやったり、ジャズセッションに明け暮れたり、エレクトロニカの機材を買いあさったりもしました。目に映るものすべてに興味があって、たくさん脱線もして、自分は何が好きなのか何がしたいのか、分からなくなってしまうときもありました。
でもこのPaul Simonのアルバムを聴くたびに、思い出せるんです。僕が音楽を好きになった原点。僕が音楽で生きていくと決めたきっかけ。そして偶然にもこのアルバムは、さまざまなジャンルの音楽や、さまざまな人種のミュージシャンが、ひとつになって奏でられている。どんなに脱線したって、最後にはひとつに出来るんだよと教えてくれるんです。
「音楽は人をひとつにする」
S&Gで親子はひとつになれたし、このアルバムはいつだって心のパレットに散らばってしまった色をひとつに整えてくれる。どんな人生の道に迷っても導いてくれるひとつの光となってくれる。いつでも安心して帰ってこれる場所。僕にとって、これはそんな1枚です。
そして、そんな1枚を…僕は父親からもう10年以上カリパクしているのです(笑)
お父さん、ごめん!!
磯貝サイモン
http://isogaisimon.net/index.html
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