どんなお仕事ですか?
フリーの制作人のようなものですが、とりあえず「フューチャーアマデウス」(以下FA)の代表をやってます。
FAはレーベルやプロダクションといった分類ではなく「トータルな視点でアーティストをプロデュースしよう」とするプロジェクトです。
簡単に言えば「制作も宣伝もマネージメントも最終的な目的は同じなんだから1つにまとめちゃおう」と。
営業やイベンター業務に至るまでアーティスト活動に必要な業務を分業にせず「プロジェクト」という総称に置き換えることで、
イメージをぶらさずに取り組めることがメリットです。
年間プランを立てその時期に必要なことを着実にやればいいわけですからそれがメイン業務です。
詞や曲を書いたりもしてます。元々が制作側の人間なので創作と表現については時間をかけすぎちゃいますね。
いずれにしてもこのやり方はアーティストやプロジェクトの草創期だからこそ出来ることなのかもしれないですが
この先もこのやり方で多くのアーティストプロジェクトを成立させられないかを真面目に考えてます。
現在は「いいくぼさおり」というアーティストをメインに手がけています。
(まだまだですがインディーズで去年の暮れにリリースしたCDが5,000枚ほど売れてます。もっと大きく育てたいのでパートナーとなっていただけるメーカーやマネージメントを探してます!)
今のFAの現状としては請負仕事や企画絡みの仕事で稼いだお金を全ていいくぼプロジェクトに投入してるようなものですね。まだまだ始まったばかりです。
今度、芝居絡みのイベントを手がけるんですがそのシナリオを書いてます。
自分を別のフィールドに置いて音楽的アプローチをすることで思わぬ発見がありますね。だから面白いことだったら何でもやりたいと思ってます。
この仕事をはじめるきかっけは?
大学時代にCMソングを手がけたんです。「自分は天才だ」と勘違いしまして大学をスパッと中退しました(笑)既に単位もたりなかったしね。
その頃の僕は 「作曲とか作詞をしながら制作に関わってアーティストの方向性とか宣伝の組み立てとかを考える人になりたいなあ」と漠然と思ってました。
「それって何だろう?」 職業名がわからない(笑)。
その頃はまだプロデューサーという言葉が今のような感じでは使われてなかったから、そんな職業があるのかさえわからなかった。
夢を聞かれると「職業名がわからないんだよね」と答えてました(笑)
夢に近づくには「とりあえずレコード会社かな」と思いソニーの新人開発部SDに入ったんです。
当時のSDには内部にフィッツビートレーベルがあってレベッカが大ヒットしてました。
制作部・宣伝部・新人開発部が1つの部内にあって かなり特殊なセクションでしたね。
新人発掘の仕事をしながらヒットアーティストの現場をすぐ側で見れたことが22歳の自分にとっては凄く大きかった。刺激的でしたね。
毎日9時〜夜中までみっちり働いてヘトヘトで辛かったけど楽しくてしょうがなかった。
仕事が夜中に終わろうが寝る時間を惜しんで先輩に飲みに連れてってもらってましたよ。
飲み屋で学んだことが実に多かったです。
手がけたお仕事の内容とエピソードを教えていただけますか?
SD時代の話ですが 某スタジオにオーディションの協力を求めに行った時に 髪を立ててるバンドがリハーサルしてたんです。それがXとの出会いでした。
ロビーで「こんにちは」と挨拶をするとYoshikiがスタジオからエレピを運び出してきて「自己紹介します」と言って、いきなりショパンを弾きはじめたんです。
鳥肌が立ちました。「この人、凄いぞ!」と。だってそんなロックバンド見たことないでしょ?
初対面だったので彼等の音楽はまだ聴いていませんでしたが「日本一になるバンドが目の前にいる。何とかしなきゃ」と瞬間的に思いました。
僕は運がいいと思う。SDでXと出会ったことが全ての始まりで、その翌年にはBOOMと出会いその翌年には高校生バンドと出会いました。それがミスチルです。
結果的にミスチルはソニーからデビューしなかったわけですが ディレクターが合格をくれなくても誰が何と言おうと自分の耳と感性は信じてた。
送られてくる何千本ものデモテープを聴いて何百ものバンドを見て、やっと見つけた1人のアーティストの才能と可能性を疑ったことは一度もないです。
その後EPICに異動してディレクターになりましたが、大した仕事もしてないんだけど担当すると売れるんです(笑)
勿論売れなかったアーティストもいますが、常にヒットやミリオンの現場に関われた自分は強運だと思ってます。
あなたにとって「音楽」とは?
自分のすぐ隣にあるもの。もちろん邪魔な時もあります(笑)
「音楽なんて遠ざけたい」と思う時もあるけど「やめよう」と思ったことは1度もないですね。
音楽に対しては嘘をつかずいつでも自然体でいたい。「仕事」という意識が薄いんです(笑)
僕はいつも「プロの音楽人でありたい」と心から願ってます。
音楽人として何をやりたいですか?
企業が「効率化」に傾いていることに疑問を感じてます。心のこもった作業は非効率と呼ばれ排除してしまう傾向がグローバルにある。
不祥事が起こる多くの原因は効率化に走りすぎた結果です。本当は「効率的に」こなすことではなく「効果的に」動くことが必要なんです。
優先度と重要度・プライオリティーの順番付けは仕事をする上でとても大切だと思いますが
FAとしては多少時間がかかっても「人の気持ち」を最重要視しながら音楽に関わっていきたい。
そういうことを真面目に考えて・一生懸命に取り組んで、FAはそんなプロジェクトでありたいんです。
僕はいつもヒット曲を作りたいと思ってるし、偉そうな言い方だけどいつでもミリオンセラーアーティストを育てたいと思ってる。
それを業界やリスナーが目を見張るような切り口で実現したいと思ってる。
“ヒット”という響きに偏った悪いイメージや商業的な匂いを感じる人もいるだろうけどでそうではない。
「大勢を喜ばせたい」という願いや努力が叶った音楽。それがヒットの意味です。
奥田民生君とパフィーで仕事をした時に彼がとてもいい話をしてくれました。
「デビュー当時の頃はロック以外の音楽や売れてる音楽をどこかで見下げてた。
自分が売れた時に周りの景色を見てみると、向こうの山の頂上には桑田さんがいてあっちの山の頂上には陽水さんがいて、
みんなが『やっと来たか。ずいぶん遅かったなあ』って言ってるようで。これからはこの人達と何か出来るかもと思えてワクワクした」と。
ヒットしている曲って、多くの場合はアーティストもスタッフも 人の何倍も努力して、悩んで、体を酷使して、汗と涙を流して、骨身を削って、死ぬ気で作品を生み出している。
0から1を生み出すことはとても尊いことで、生み出した1を10にするための表現は研ぎ澄まされたものであり、その10を100にするための動きは死ぬ気の努力です。
チャンスが目の前にきた時にどう取り組めるか・どう動けるのかは、それまで培ってきたモノや磨いてきたセンスがものをいうんだと思います。それすらも努力です。
ただならぬ努力にこそ売れる理由があるわけで、単純に「いい曲ができた」「宣伝費をかけた」というだけの話ではない。
自分の欲求を満たす為の音楽は その瞬間は気持ちいいかもしれないけど虚しい作業だと思ってる。
音楽も仕事もプライベートもそれは同じですね。
まずは相手が第1で、音楽という生き方にはそういう部分が少なからずあると思う。
相手が喜べば自分も最高に幸せなわけですから。
音楽を通して誰かを喜ばせたい。いつの時代もこの世界の目指すところはそこしかないわけですから。
これからこのお仕事を目指す人へアドバイスをお願いします。
会議で賛成が多い時ほど 往々にして間違ってたりすることがある。「賛成」というのは「別に反対ではない」というニュアンスがあったりもする。
そういう意味では自分の提案に対して99人が反対した時こそがチャンスですね。めげる必要がない。
だって、自分が本当にいいと思った気持ちや直感を信じられなければ何を信じるんでしょう? 口をつぐんでしまえば感性は確実に錆付いていきます。
ある局面では頑固に大胆にならなくちゃいけない瞬間がある。そう思ってます。
諦めず、簡単な方に進まず、伝えなければいけないことは嫌がられようが熱意を持って話せば最後はわかり合えることが実に多いような気がします。
偉そうなことは言えませんが上に行きたいのなら自分の感性や意見を押し通す勇気を持つことです。そうすることで自信が生まれそういう風にして身に付けた自信は決して揺るがない。
弱音を吐いたりふてくされた時点で確実に遅れをとり、見離されるものです。
協調し合ったり同調することで人間関係や規律は保てるだろうけれど、音楽が生まれる現場では全く意味のないことです。
ぶつかりあった時に飛び散る火花こそがヒットを生み出し次のシーンを作るのだと思います。
そこで壊れるようなプロジェクトなら終わったほうがいいし、自分が傷ついても覚悟を決めてとことん向かっていくことでしか新しい道は切り拓けないと思います。
だから繊細ながらもタフになることかな。そして謙虚ながらも貪欲にです。
それと、上司や先輩に厳しい口調で注意されようが、罵倒されようが、駆け出しの頃はしょうがないわけだから不貞腐れないことですね。
肝心なことは「向けられている言葉が悪意を持っているかどうか」です。悪意がない言葉は確実に人を育てます。
この世界は楽しいことばかりではないけれど「音楽で味わう辛さや苦しみさえをも 楽しんでしまえる人」が伸びていく人だと思います。
それはどんな職業でもきっと同じでしょうね。どんな職場や現場にも影ながら見守ってくれてたり支えてくれてる人は必ずいるものです。
|